ノームの森~The Forest of Gnome~

(作)梶木かじき遊仁ゆうじ

ノームのみる夢 木馬といっしょに

ノームは一体どんな夢をみるのでしょうか?今回は、木馬職人が見た不思議な夢をのぞいてみましょう。

木馬のできあがり

明日はいよいよ新年です。
キノコの傘村中が慌ただしい、そんな日でも、ノームの木馬職人さんは、春に誕生予定のピグミー・ピグミー族の赤ちゃんのために、とびっきりの木馬作りにはげんでいます。

「さ、このエメラルドの目を付ければ完成じゃな。」

この目は、イヴの子たちが落としたもので、木馬職人さんが素材集めの旅の途中で拾ったものです。エメラルド色のキレイなもので、これを見つけた時に、作成中の木馬の目として取り付けることを、迷わず決めたほど気に入ったものでした。
ピグミー・ピグミー族でも久しぶりの赤ちゃんの誕生です。木馬職人さんは、いつも以上に張り切っていたのです。

トントントン、と丁寧に目を付けます。

「うむ、良いできじゃ。やっぱりこのエメラルドの目はピッタリじゃった!良いしごとをした。」

そうひとりでつぶやて、木馬職人さんは、体に付いた木の粉をはたいてベッドにもぐりこみました。

不思議なお願い

「………て。」

「………きて。」

「ねえ、おきて!」

どのくらい寝ていたのかわかりませんが、誰かの呼ぶ声に、木馬職人さんは目を覚ましました。あたりはまだ真っ暗です。

「なんじゃ、こんな時間に…、一体だれじゃ?…」

木馬職人さんが眠い目をこすりながら周りをみると、完成した木馬がこちらをみて呼びかけていました。そして、こう言いました。

「世界樹から日が昇る方向に、暦(こよみ)の年の数だけ歩いて行ってごらん。そこには、大きな切株があって、芽がたくさん出ているから、一番目と二番目に大きな芽を取ってきて、ボクの体に取り付けてよ。」

「どうしてじゃ?」

「フフ。それは…、やってみてのお楽しみだよ。」

「まったく、こんな夜中に…。」とブツブツ言いながらも、木馬職人さんは、言われたとおりに向かいます。

言われたとおりの場所に、大きな切株があり、たくさんの芽が生えていました。一番目と二番目に大きな芽をとってきて、木馬の体に取り付けました。

星空のなかで

体に取りつけたとたん、芽はどんどん伸びて、羽の様に広がりました。

「さあ!いくよ!ボクに乗ってよ!」

そういって木馬職人さんを乗せた木馬は、一気に駆け出し、空高く舞い上がっていきました。キノコの傘村があっという間に小さくなってしまい、今は世界樹を見下ろしています。

見えるのは、辺り一面の雲の平原。そして、世界樹の先端が、ちょっとだけ雲の平原から顔をだしています。

「ひゃあ!高い!高い!」

「大丈夫!心配しないで!ほら、見てごらん!」

満天の星空が、直ぐそこに広がっていました。星の海の中を泳いでいるような気分になります。

どこからともなく、三匹のバテイモンチョウがやってきて、木馬のまわりを飛びまわっています。しばし一緒に飛びながら星の海を楽しむのでした。

夢からさめて

「そろそろ……、あ、出てきた!見て見て!」

雲の平原のはるか向こうに、小さいけれど強い光が見えてきました。光は段々と大きくなりながら、雲の平原から顔を出してきます。

「ああ!いよいよ新年じゃな。木馬よ、今年も良い年にしような。」

「うん、きっと良い年になるよ!」

「その立派な目で、赤ちゃんを見守っておくれ。頼んだよ。」

そう言ったところで目が覚めました。確か、空の上で日の出をみていたと思ったのですが、ベッドの上でした。木馬に取り付けたはずの切株の芽はどこにもなく、昨晩完成した時の木馬があるだけでした。

朝陽に照らされた木馬の体をよく見ると、羽があった部分に新しい芽が二つ出てきていました。木馬職人さんには、その二つの芽とエメラルドの目が、ぼんやり輝いている様に見えました。

「う~ん、夢じゃったか?」

「まあ、どっちでも良いか。さあ、新年じゃ!今年も良い年にしような!木馬よ。」

今日、村は新年のお祭りです。